家族旅行でせっかく欧州まで飛ぶのだ。どうせならもう1か国くらいは行ってみたい、そう思った私の目に留まったのはチェコで開催される航空祭の情報だった。辺鄙な片田舎で開催されるくせに一人前にInternationalと称するこのエアショーの見所はウクライナから飛来するフランカーだという。近年デジタル迷彩に塗り替えられたその機体は戦闘機ファンなら一度は見てみたい存在。単座のSu-27Sと複座のSu-27UB、どちらが飛行展示を行うかは当日まで分からなかったが、夏の欧州二か国目はチェコ共和国に決定した。
ヘルシンキからフィンエアーに飛び乗ってプラハに到着したらそのままチェコ鉄道の誇る高速列車Railjetや快速列車を乗り継いでHradec Královéへ。とくに見所もない街で航空祭が無ければおそらく外国人など誰も来ない街だろう。かのイギリス資本のTesco Metroがデパートに分類されるほどだ。そう思うとこれは平和堂的な存在なのかもしれない。急に親近感が湧いてきた。
苦労してたどり着いた土地だ。頭の中ではすでに青空を舞うソ連戦闘機が描かれつつある。しかし開催1日目は冷たい雨。ひたすら寒さに耐えた結果は惨敗だったが、こればかりは仕方がない。翌日の予行演習と割り切ってファインダー越しに演目を眺めていた。夕食は英語が一切通じないおばちゃんから買ったドネルケバブだ。辛い。いや、これは「からい」であって「つらい」ではない。名産ピルスナーウルケルをがぶ飲みして乗り切った。
そして迎えた2日目は快晴とまではいかなくとも晴れ間の見える天気。前日の雨が蒸発しすこし蒸し暑ささえ感じる。会場で買ったビールとソーセージを片手に眺めるアクロバット飛行は至福の時間であった。
ショーも終わりに近づいてきた。一つ前の演目が終わるとすぐにウクライナ美人が会場左手から突っ込んでくるはずだ。前日の飛行パターンを思い出しながら新調した300mmレンズを振り回していると美しい機体がモニターに写っていた。今夜は宿に帰ってチェコビールで乾杯しよう。昨日もしたが。
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